story

物語はインドのヨガセンターで

ボロボロになった樹脂のヨガマットの山を見たところから始まりました。


「布製のヨガマットを作りたい!!作らなきゃ!!」


その直感と衝動は結構大きくて

インド滞在残りわずかというところで私を突き動かしました。


現在、市販のほとんどのヨガマットには石油系の素材が混入されています。

石油系の素材の何が問題かって

様々な添加物を添加しないと使えるものにならないのです。

その添加物のせいで

最終的に微生物分解がされず、

マイクロプラスティックの問題から逃れられずにいます。


石油系の製品は最初はピカピカだけれども

実は劣化が早く、劣化した時の補修が効かず

数年でゴミになってしまいます。


ヨガという「世界との調和」を探究する道が

膨大なゴミを生み出しているなんて

おかしいんじゃないだろうか??


そもそも私がインドでヨガを学び始めた16年前、

道端で売っていたのは布のヨガマットでした。


そういえばインドの空港や駅で

ヨガをしている行者がたくさんいたけど

みんなウールやコットンの布を強いてやっていたじゃないか!!


ふと初心を思い出し


「そうだ!!もともと布マットを敷いていたのだから

 布のヨガマットがあるはず!!」


そう思って探し始めたのが始まりでした。


しかしなかなか布のマットには出会えず、

数週間が経った頃、インド人の友人が

ハンモック職人のシャクティーを紹介してくれました。


インドでの滞在日数も1週間を切っていた私は

飛ぶように、彼の自宅兼、工房に行ってみました。

すると布のマットがあったのです。


なかなかビビッドな色で染められたヨガマットは

シャクティーが知り合いの織物職人のところに発注して

オリジナルで作っている商品だそうでした。


シャクティーは子どもの頃から

ハンモック職人の元に弟子入りしてハンモックを作っていました。

その中でたくさんの伝統工芸の職人に出会い、

織物という文化に興味を持ったそうです。


そして自分の家から車で7時間くらい行ったところに

織物の村があることを突き止めました。


彼はそこに行き、

織物の村と交流するようになりました。


織物の村は本当に小さな村。

学校が一つと、お寺がいくつか。

井戸水を引いていて、

共同のトイレが一個。

お日様とともに起きて

薪で調理して、

井戸水を組んで

少しの野菜を育てて

少しの現金で日用品を買って・・・・。


原っぱのような雄大な土地に

土と石灰の可愛い家を作り

織物をしながら暮らしています。


(ホーム画面の動画を見てみてくださいね。)

インドでも工業化が進み、

織物職人の仕事がなくなりつつあります。

仕事がなくなると、若い男たちは工場に働きに出るしかありません。


このままだとこの村が代々受け継いできた

織物という手仕事が途絶えてしまう。


そう思ったシャクティーは

布製のヨガマットをこの村にオーダーし、職人たちに仕事を作り

街に持っていって売るという仕事を始めたのでした。

織物の神様の仕業としか思えませんが

そのシャクティと出会ってしまったのが

布製のヨガマットを作りたいと思っていた私でした。


私はシャクティーと話をし、

染色時の環境負荷の少ない

草木染めの糸でヨガマットを作れないかと相談しました。


最初は困惑していたシャクティーでしたが

次第に私の思いを理解してくれ動いてくれました。


「いつか、染色も村でできるようにしたいね。」


と語り合いながら、

他の工場で染めてもらった草木染めの糸を購入して

マットを織る段取りをつけてくれたのです。


次の年、インドに行くと

シャクティーが旅に招待してくれました。

なんと車で7時間かけて織物の村まで連れていってくれたのです。


その村に辿り着いた時は鳥肌でした。


自分が見えない力に動かされていたことに気が付きました。


村の人たちの魂が私たちを呼んで

ヨガマットプロジェクトを始めさせたんだということに奇跡を感じました。



村のリーダーの奥さんが

その辺に生えているバナナの木からバナナの花をとって

薪火でつくってくれたバナナの花カレーの美味しかったこと。


若い女の子たちが人懐っこくて可愛かったこと。


白褌の織物マスターがマットを織ってくれている様子。


村の子どもたちが通う学校。


お寺。


可愛い家々。


ジョークが上手なおじさんたち。


素直でシャイな子どもたち。


健康的な村の暮らし。


糸を染める職人や、

草木染めの製品を扱っているローカルの問屋も周り

早朝から1日かかりのロングトリップでした。

村の人たちにリアルで出会い、

その生活を見て話を聞いてからは

私の中で使命感が芽生えました。


このむらの優しい暮らしを守っていくために

職人たちに仕事を作る。


きっと私がやっているうちに

インド国内でも

職人たちの仕事の大切さに気づき

引き継ぐ人が出てくる。


それまで、このプロジェクトで村を支えたい。


そんなふうに、この人たちの顔を思い浮かべて

マットに関する仕事ができるようになりました。



その次の年、世界はコロナ禍に入り

ヨガマットプロジェクトは困難を極めました。


インドとも連絡がつかなくなり

いろんなことが止まってしまいました。


それでも私の中で、この村とのつながりは

途切れていません。


少しずつですが、

このプロジェクトは続いています。


ただの「ヨガマット」という用途で呼ぶには

このマットは大きすぎる。


このマットが体現してくれているのは

巡るエネルギー。

メグル繋がり。


そんなところから


環る降布  /  メグルマット 


と名付けました。


「環る」にはただ巡るだけでなく

「かえってくる」という意味があるそうです。


愛からメグルマットを購入してくれた皆さんに

愛というエネルギーがかえってくる。


そんなマットでありたいなと思っています。